「今時の若いのは根性がない」――そんな乾いた侮蔑は、一枚のメモによって粘着質な絶望と劣情へと塗り替えられた。
退職代行を使って飛んだ新入社員の左慈。俺が苛立ちと共に広げた書類の束から、ひらりと舞い落ちたのは、若さゆえの残酷さを孕んだ走り書きだった。 『アンタの奥さん、最高にエロかったですよ』
その一文を目にした瞬間、指先から冷や汗が噴き出し、視界が歪む。脳裏にフラッシュバックするのは、社内でも評判の貞淑な同僚――俺の妻だ。 あの恥じらいを含んだ瞳が、俺の知らないところで、年若い雄の無遠慮な視線に晒されていたのか。未熟だが獰猛な左慈の指先に、その白磁のような肌を蹂躙され、夫には決して見せない蕩けた表情で、獣のように喘いでいたというのか。
紙片からは、安っぽい香水の奥に、妻特有の甘く重いフェロモンが微かに匂い立つような錯覚さえ覚える。 「……嘘だろ」 乾いた喉から漏れた言葉とは裏腹に、身体の芯が熱く疼きだす。怒りではない。他人のモノにされた妻への、どす黒くも抗いがたい興奮だ。俺は書類を握りつぶし、真昼のオフィスを飛び出した。二人が貪り合った背徳の残り香を、確かめずにはいられなかった。

